みなさんは、「書道」というと何を思い浮かべられるでしょうか?習字?漢字?子供の頃に近所のおばあちゃんに習っていたとか、色々なご経験がおありかと思います。「書道にちょっと興味がある」「これから書道を始めたい」と思っていらっしゃる方に、私の経験とそこから感じた「書道を始めると良い理由」を少しお話ししたいと思います。
書道を始めたきっかけ
かくいう私は、小学生の頃に近所でまさに「習字」をやっていました。「の」の字が上手く書けなくて先生に怒られてそれが嫌で2か月でやめてしまいました・・・。その後、中学に入っても、先生に「ミミズが酒飲んで酔っ払っているみたいな字」と言われてトラウマは消えず、高校では選択科目は「書道」ではなく「音楽」を選択していました。
そんな私が日展に4回も入選してしまうとは・・・人生どうなるか本当にわかりません。思い返してみると、子供の頃にやっていたのは「習字」で、とにかく型通りに字を書く、ということだったのだなぁと思います。今も、美文字とか流行っていますが、何をもってきれいとか、美しいとか、上手いとかいうのか・・・それは本当に好みだったり判断が分かれるところだと思います。そういうことにこだわっていたら、日展作家にはなっていなかったと思います。
私が書道を始めたきっかけは、外資系企業の管理職で仕事ばかりの毎日から脱却することでした。正月に一人で地下鉄に乗って、「2年で師範に」という書道の専門学校の広告を見て、体験講座に出向いてそのまま入会しました。あんなに苦手意識があったのに、この「2年で師範」という文字に動かされたのは不思議ですが、実は書を好む親や親戚から「あなたの字は良い」となぜか言われてきていたので、なんとなくそれを証明したかったのかもしれません。
専門学校では、楷書、行書、草書、隷書、仮名を一通りやり、歴史も勉強しました。課題も多く昇段試験もあったので働きながらこなすのはとても辛かったです。でも一通りやったおかげで、自分はあの仮名の流麗な線と綺麗な紙の織り成す世界が好きだということに気づき、卒業後ものめりこんでいきました。
その後、素晴らしい先生、仲間に巡り会い、こうして日展入選までたどり着けたわけですが、その話はまた今度にするとして、なぜ「書道を始めると良いか」について自分の体験から少しお話しします。
理由1:自分と向き合うことができる
ご存じの通り、会社生活のストレスの原因の第一位は人間関係。私もそうでした!24時間心休まる時がなく、愚痴りたくもなるし、泣きたくもなるし、自分はこのままでいいのかと途方に暮れるし、老後は何をしたらいいのかわからないし。でもそれを解決するのは自分でしかないので、じゃあどうすればいいのか?を考えていた際(正月の地下鉄で)書道と出会って気づいたのが「自分と向き合う大切さ」でした。その日の体調がもろに書に表れます。それを見て冷静に自分を客観視し、今の自分を知ることができるようになりました。何より先生に指摘されると本当に心の中を覗き込まれるようで恥ずかしいのですが、やっぱり書には自分がでてしまうのです。ということは、書道は自分と向き合うための1つの方法であり、筆1本で心が整う簡単な方法であると言えます。
理由2:デジタル時代に不足しがちな感覚を刺激する
PCやスマホで仕事をする時代になり、コロナ渦でZoomなどを用いたテレワーク時代になると、「五感」が疎かになりがちだと感じました。目は疲れるし、手は腱鞘炎になるし、スマホばっかりみて情報過多な生活に疲れ、街に出ることもできない・・・骨折した時に理学療法士さんとも話していたのですが、脳が健康だとストレスにも強く、心身を健やかに保つことができるそうです。脳を健康にするには「五感」に働きかけることが大事で、書道にはそれがあるのではないか?という話(骨折治ってしまい、話はここまで)。見る、聴く、味覚、嗅覚、触覚のうち、味覚はないかもしれませんが、手本を見る、先生の話をきく(音楽をきくでも良いかもしれません)、墨のにおい、紙の感覚・・・骨折した人のリハビリにもなるそうです。書道が脳に良いように働きかけることは、あながち間違ってはいないのでは、と思われます。
美しい料紙に筆を走らせる瞬間も刺激的!
理由3:とっても手軽
忙しい大人のみなさんの中は、ヨガやランニングなど運動でストレス解消ができる方も多いと思います。私も体育はずっと5だったし運動はやりたいのですが、とにかくめんどくさがり屋なので、準備に時間がかかってしまいます。その点書道は硯、筆、紙さえあればいつでもできます。これは大きなメリットでした!
理由4:観察眼、気づきが増える
臨書(りんしょ)といって、手本をまねて書いて勉強をしますが、自分ではちゃんと見てかいているつもりでも先生に見ていただくと全く見ていないことに気が付きます。線の太さ、長さ、曲がれ、折れ具合、線と線の間隔、方向など・・・これはやればやるほど気づきが多いものです。ある日絵画展に行ったのですが、今までは気づかなかったような表現が気になるようになり楽しさも倍増しました。書道にだけではなく多方面に役にたつ力といえると思います。
理由5:教養が身につく
せっかく時間やお金をかけるのであれば、ストレス解消だけでなく、教養も一緒に身につけたいと思いませんか?特に「かな書」を勉強すると変体仮名が読めるようになり、日本の歴史や文化に触れますので、昔の武将の書状が解説なしで読めるようになります。また結婚式などの芳名帳などに自分の名前を自分らしく書くこともできるようになりますよ。人から褒めらるとちょっと嬉しいです。
日展初入選作品、源氏物語の和歌(紫式部)日本文学にも触れることができます♪ ©kanekoseiko
以上ずらりと書いてまいりましたが、いかがでしょう?少しでも気になることがありましたら、ぜひ体験されてはいかがでしょうか。過去にご縁のあった生徒様からも感想をいただいていますので、ぜひそちらも参考になさってください。
この5点に関してはまたもう少し掘り下げて書いていきたいと思います!
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